交通事故でむちうちになった場合の慰謝料の計算方法

車1

交通事故で大変つらいのが、むちうちによる頸椎捻挫です。むちうちによる症状は人によって違いますが、首が痛い、体が重い、疲れやすい、吐き気がするなどの諸症状で、仕事や生活に支障が出るなど、精神的に大変な苦痛を生じさせます。

交通事故によるむち打ちの場合、被害者は、加害者に対して、慰謝料をどれくらい請求できるのでしょうか。詳細-弁護士法人アディーレ法律事務所 > 交通事故 慰謝料

むちうちの場合の慰謝料の計算方法について解説します。

むちうちとは何か?

「むちうち」は、交通事故の際の衝撃で、鞭のように頸部がしなり、急激に首に負担がかかった結果引き起こされる頸部の損傷のことです。正式な傷病名ではなく、病院では「頸椎捻挫(けいついねんざ)」などと診断されます。

むちうちの症状は、損傷部位や個体差により人それぞれですが、首の痛み、体が重い、頭痛がする、疲れやすい、眠れない、めまいがする、などの様々な症状が出て、交通事故の被害者を苦しませることになります。

交通事故の慰謝料には2種類ある

交通事故によるむちうちの慰謝料には、2種類あります。ひとつは、怪我をしたことによる精神的苦痛に対する慰謝料で、傷害慰謝料とか入通院慰謝料とよばれます。もうひとつは、後遺障害が残った場合に、残存症状が残った精神的苦痛に対する慰謝料です。

後遺傷害慰謝料などと呼ばれています。慰謝料というのは精神的な苦痛に対するものなので、本来は、個々の被害者の特性や事情により、相当と考えられる慰謝料額は違うはずですが、交通事故の場合、毎日全国で大量に発生することもあり、ある程度画一的な処理ができて不公平がないように、一定の基準が設けられています。

傷害慰謝料(入通院慰謝料)の基準

交通事故7

傷害慰謝料は、入院や通院をした日数や期間をもとに支払われます。自賠責保険の支払い基準は、1日あたり4200円です。ただし、治療期間を考慮して、この2倍まで増額されることがあります。つまり、治療期間30日のうち10日間病院に通院した場合は、自賠責の支払い基準では、10日×4200円×2の8万4000円が上限となります。

これが自賠責保険から支払われる上限になります。もっとも、自賠責の基準だけでは、多くの被害者は納得できないでしょう。弁護士が依頼を受けて請求するときは、裁判基準とか弁護士基準などと呼ばれるものを用います。

過去の裁判例を分析して、もし仮に損害賠償請求訴訟を提起して慰謝料を請求した場合、裁判所がどれくらいの慰謝料を認定するかということを考えて作られた基準で、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準篇)」(公益社団法人日弁連交通事故故相談センター東京支部)という本に掲載されています。

この本は毎年改定されて出版されます。表紙が赤いことから、通称「赤い本」と呼ばれています。この基準であれば、慰謝料額は、自賠責基準より高くなることがほとんどです。弁護士が交通事故の損害賠償請求をする場合に使う「赤い本」では、傷害慰謝料はこの本に掲載されている「別表1」か「別表2」の何れかの表を用いて計算します。

むちうちで他覚所見がない場合は「別表2」という表を参考にして、慰謝料額を算出します。むちうちの場合は通常、自覚症状のみで、画像などに現れる他覚的な所見というものがありません。もし、画像にはっきりと交通事故による損傷箇所が写っている場合はより高額な「別表1」が使えますが、そのようなケースは極めてレアです。

「別表2」を用いて計算した場合、傷害慰謝料は、通院1ヶ月なら19万円、通院2か月なら36万円、通院3ヶ月なら53万円、通院4ヶ月なら67万円、通院5ヶ月なら79万円、通院6ヶ月なら89万円、通院7ヶ月なら97万円、通院8ヶ月なら103万円、通院9ヶ月なら109万円、通院10ヶ月なら113万円です。

入院期間がある場合は、さらに高額になります。

後遺障害慰謝料の基準

後遺障害慰謝料は、損害保険料率算出機構という組織の損害調査事務所というところが、後遺障害等級認定をした場合に支払いがなされます。

後遺障害等級認定は1級から14級までの等級があり、数字の小さい1級が症状の重いもので、数字の大きい14級が比較的軽いものです。むちうちの場合に該当する可能性があるのは、12級か14級です。

具体的には、後遺障害14級の「局部に神経症状を残すもの」、あるいは後遺障害12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する可能性があります。後遺障害というのは、一番軽い14級でも労働能力を5%程度喪失した場合ですので、仮に若干の症状が残っていることが明らかでも、等級が必ず認定されるものではありません。

自賠責保険の場合、後遺障害14級が認定された場合は、後遺障害慰謝料として32万円が支払われます。また、12級に認定された場合は、後遺障害慰謝料として93万円が支払われます。弁護士が請求する場合に使う「赤い本」の基準では、後遺障害14級の場合は110万円、後遺障害12級の場合は290万円となっています。

後遺障害等級認定

交通事故の慰謝料額は、後遺障害等級認定が得られるかどうかで、大きく違います。後遺障害等級認定は、治療がすべて終わった後で、損保料率算定機構の損害調査事務所というところに申請して行います。損害調査事務所は、被害者の治療期間中の診断書や、症状固定時に医師が書いた後遺障害診断書、さらにレントゲン・CT・MRIなどの画像などを分析して、後遺障害の該当・非該当を判断します。

後遺障害等級認定で該当の結果が出ると、後遺障害慰謝料のほか「後遺障害逸失利益」という損害も請求でき、損害賠償額全体がまったく違ってきますので、被害者にとってはとても大切な手続です。

損害は慰謝料だけではない

慰謝料というのは、被害者が受けた精神的な苦痛に対する損害賠償金です。交通事故の損害賠償では、慰謝料のほかにも加害者に請求するものがあります。治療費や入通院費などの実費はもちろん、休業損害、後遺障害逸失利益などの請求費目がありますので、これらの損害をすべて計算したうえで、加害者や、加害者の任意保険会社に請求することになります。

加害者の任意保険会社は、被害者が何も言わなければ、慰謝料などはすべて「自賠責基準」で提案してきます。自賠責基準で示談ができたら、加害者側の任意保険会社は、被害者に損害賠償金を支払った後、自賠責保険会社に請求すれば、自賠責保険会社からすべて回収できます。

任意保険会社の腹は痛まないのです。交通事故の損害賠償は大変複雑です。加害者側の損保から示談の提案があった場合は、示談に応じる前に、弁護士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。